デカメロン(1349-1351)よりフェデリゴ・デッリ・アルベリギ
ジョバンニ ボッカッチョ (1313- 1375) 作
第三部食事も終わりにさしかかった時、モンナ・ジョバンナはフェデリゴに息子の病気について話し、その息子がフェデリゴの鷹を欲しがっていると打ち明けました。そして、”どうかあなたの鷹を息子に譲って下さいませんか?たぶんそれが息子を回復に向ける唯一の頼みの綱なのです。”と頼み込んだのです。
その悲嘆にくれた懇願を聞いたフェデリゴは泣き始めてしまいました。そして彼は、彼女の期待に添えないことを打ち明けました。フェデリゴはモンナにふさわしい食卓を饗するために彼の愛する唯一の宝物である鷹を殺し、料理したのです。それが彼が持つ物の中で一番価値のある大切なものだったからです。
Federigo e Monna Giovanna, XIX sec. |
モンナ・ジョバンナはあれほど美しかった鷹を殺してしまったフェデリゴを咎めましたが、実のところは彼女のために大切な鷹をも奉げる彼の心に打たれていました。悲嘆にくれたモンナは、家に戻り、息子にフェデリゴの鷹の顛末を伝えました。残念ながら、息子はその数日後に亡くなってしまいました。
その後モンナは、独り悲しみにくれた生活を送っていました。ですが兄達は、いまだ若く美しくいまや大金持ちになった妹を何とか再婚させようと説得し続けました。初め彼女は再び結婚して家庭を持つ気持ちなど心の隅にもないと断りましたが、時がたつにつれ心が変わり、再婚の勧めに同意することにしました。そしてフェデリゴを新しい夫に選んだのです。モンナはフェデリゴが貧しくとも心豊かな人間であることを良く知っていたからです。
こうしてたどり着くまで多くの苦難をのり越えて、フェデリゴは彼がずっと以前から愛し続けた女性とようやく結婚することが出来たのです。その後二人は幸せな満ち足りた人生を送りました。
日本語訳 福島かほる
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