デカメロン(1349-1351)よりナスタジオ・デッリ・オネスティ
ジョバンニ ボッカッチョ (1313- 1375) 作
ボッカッチョは“Volgare*” と呼ばれた1300年代のイタリア語でデカメロンを書き上げました。ここでは、イタリア語中級レベルのみなさん向けに現代イタリア語で要約したデカメロンの中の物語のひとつ、ナスタジオ・デッリ・オネスティを掲載します。
*Volgareは、当時ラテン語に対しての俗語という位置づけでした。
Seconda parte 第二部 (イタリア語へ)
5月の初めのある金曜の晩、松林の中を通り抜けようとしてたナスタジオはある娘が泣きながら裸で走っているのを見つけました。その娘の顔は絶望に満ちています。すると、その娘の後を2匹の犬と漆黒の馬にまたがる黒装束の騎士が追ってきます。その騎士は剣を振りかざし今にも娘に襲いかかろうとしています。それを見たナスタジオは何とか娘を守ってあげようと、仲裁に入りました。するとグイド・デッリ・アナスタジと名乗る黒衣の騎士はナスタジオにこう語ったのです。―はるか50年以上昔に、彼にはとても愛した女性がいました。ですがその女性は、彼の愛に応えてはくれませんでした。そして彼は絶望のあまり自殺してしまいました。その少し後に彼が愛した女性も亡くなりました。生前彼女は黒衣の騎士に対する自分の冷淡な態度を悔いるどころか、自分への愛の為に彼が自殺したという事を喜ぶ始末でした。そんな罰当たりな態度をとった彼女と、キリスト教では決して贖罪される事のない自殺という道を選んだ黒衣の騎士は、二人とも死後地獄へ落ち、永遠の死の狩りという罰が与えられました。金曜日がくると、2匹の犬と黒衣の騎士はその女性を追いかけ、つかまえ、殺すのです。ですが彼女は生き返り、そしてまた同じ責め苦が繰り返されます。それは毎金曜日の晩に永遠に続くのです。追いかける黒衣の騎士と殺される女性に安らぎはありません。―
その娘を黒衣の騎士から救うことは出来ないと分かったナスタジオは、この場に居合わせたのも運命と、身の毛もよだつその殺戮劇に立ち会いました。
第三部に続く
日本語訳 福島かほる
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